東京大学医学部・大学院医学系研究科

高齢者在宅長期ケア看護学/緩和ケア看護学

Gerontological Home Care and Long-term Care Nursing/ Palliative Care Nursing
The University of Tokyo, School of Health Sciences and Nursing

Gerontological Home Care and Long-term Care Nursing/ Palliative Care Nursing

The University of Tokyo, School of Health Sciences and Nursing

Home / 大学院生募集 / 学生へのメッセージ

学生へのメッセージ

東京大学 高齢者在宅長期ケア看護学分野では、老年看護学・在宅看護学・家族看護学を主な研究領域とし、高齢者とその家族への看護について研究に取り組んでいます。研究テーマは大きく分けて以下の3つです。

長期療養施設・在宅におけるケアの質保証・改善とケアスタッフのウェルビーング両立

高齢者の多くは在宅および長期療養施設で過ごされています。急性期の一般病院における看護と比較し、在宅および長期療養施設における看護の質保証はまだあまり開拓が進んでおりません。私たちは、在宅および長期療養施設のケアの質の指標を開発し、その活用を通じて、社会においてあらゆる人々が等しく質の高い看護・ケアを受けられるしくみづくりを追求しています。具体的な取り組みとしては、①在宅・長期療養施設等で汎用可能なケアの質指標quality indicatorsの開発、②標準化質指標の活用によるケアの質管理システムの開発を行っています。また、看護・ケアの質向上は看護師・ケア提供者のウェルビーングを抜きには考えることができません。看護・ケアは対人の実践であり、看護師・ケア提供者は生身の人間です。私たちは、ひととしての看護師・ケア提供者が、看護・ケアの仕事にやりがいを感じて仕事を継続しウェルビーングを保つことができる働き方を、ケアの質向上の一環として捉え、両者を追求していきます。具体的な取り組みとしては、事例検討会・ケアに関する語り合いを通じた長期療養施設スタッフのウェルビーング向上研究などがあります。

事例研究による新たなケアの知の構築

対人の実践である看護・ケアは、ケアの提供者と受け手、さらにその人たちを取り巻く多様な文脈の影響を受けて成立する一回性や、身体とこころ、スピリチュアリティを要素に分けることができない全人性が特徴です。そのような看護・ケアの実践には、個別事例を検討することによってしか得られない知があります。しかし、事例の検討は従来の科学観のもとでは科学性が低いとされ、その価値が軽視される傾向がありました。私たちは、看護・ケアの知を構築する事例研究のあり方について、その学術性を含めて検討していきます。年に数回の事例研究ワークショップ(「ケアの意味をみつめる事例研究」ワークショップ)、現場の看護職・介護職との協働による事例研究の発表、病院看護のラダーシステムを通じた事例研究の実践、などを、哲学など他領域の研究者とともに行っています。この取り組みは、ケアの質保証・改善や、看護師・ケア提供者のウェルビーング追及という当教室の研究課題にも直結しており、事例研究を通じた看護・ケア質改善などのとりくみを、訪問看護ステーション・長期療養施設において、多領域の研究者と協働で実践しつつ検討を進めています。

地域共生社会における看護実践の新たな展開

超高齢社会となった日本では、老い、障がい、病などにより生きにくさを抱えて長い人生を送る人々が多く存在します。そのような人々に寄り添い、誰もが生き生きと日々を暮らせるようになるために、看護も従来の提供システムを超えて新たな展開を目指すことが望まれます。私たちは、Nurse Practitionerなど高度実践看護の今後の在り方、ソーシャル・コミュニティ・ナースによる地域における新たな看護の展開、看護の視点からの新たなまちづくりへの貢献など、先駆的事例を検討しつつ、地域共生社会における新たな看護提供のあり方を検討しています。具体的には、認知症について考えるゲーミフィケーションを活用した自治体との産官学共同事業・研究、介護と仕事の両立を目指した職場づくりのための検討、地域における先駆的看護実践の事例検討などに取り組んでいます。


大学院では、自立して日本の看護学を世界に発信できる研究者の育成を目指します。日本や世界の看護学を発展させ、より質の高い看護実践の実現に貢献できるよう、切磋琢磨しています。また、研究者として他者とつながる力を育むことを重視しています。今や看護学の構築と発展は一人でできるものではありません。日本の、世界の看護の発展のために、複数の研究者が慎重な検討のもとに今後の方向性を決定し、相互協力の下で戦略的に看護学を構築すべきだと考えています。更に研究成果は研究者だけではなく、実践の場にいる人、看護専門職以外の人々にも活用可能な形で提示しなければなりません。研究のプロとしてのコミュニケーションを学んでいきたいと思います。